シーティングベルトとは

シーティングベルトは大腿直筋(二関節筋)を模して作られたベルト型の装具です。シーティングベルトは主に腰痛予防に有効です。ベルトを締めることで腰椎の生理的前弯を引き出し、座位姿勢を理想的な形に矯正します。デスクワーク時にはかなり腰痛が緩和されます。椅子座位だけでなく長座位やあぐら座位の状態でも利用できます。

 

その他にシーティングベルトには突っ張った時にハムストリングの筋収縮を引き出す作用があります。大腿直筋と同じようにシーティングベルトは股関節屈曲と膝関節伸展に作用しますが、ベルトを突っ張る時には股関節伸展作用が必要ですから、シーティングベルトの股関節屈曲作用を打ち消すためにハムストリングが強力に収縮するのです。この現象を利用することで大腿四頭筋とハムストリングの共同収縮が得られ、膝関節の理想的なトレーニングが行えます。

シーティングベルトは二関節筋の研究を元にダイヤ工業と共同開発しました。

 

(参考文献)

座位保持機能と移乗介護動作補助機能を併せ持つ装具の開発

河村顕治、岡田育子、松尾高行、川上真幸

日本義肢装具学会誌 19巻特別号 242-243, 2003

(概要)座位保持機能と移乗介護動作補助機能を併せ持つ簡便なベルト型装具を開発した。このベルトは2関節筋のメカニズムを取り入れており、介護者が移乗動作の介助を楽にできる。新型介護用ベルトは介護者が両手で被介護者の骨盤を引き起こし、介護者の肩が被介護者の上半身を押すことによって生じる被介護者の股関節伸展モーメントを膝関節伸展モーメントにに転換することにより移乗動作を容易にする。またこのベルトは座位保持機能も併せもっており、ベッド上での長座位や端座位、車椅子座位などの座位保持にも有用である。

 

座位保持機能と移乗介護動作補助機能を併せ持つ装具の研究

河村顕治、加納良男

日本義肢装具学会誌 20巻特別号 246-247, 2004

(概要)座位保持においてシーティングベルトは腰部以下の固定性を高め頚椎・胸椎部の筋収縮を軽減する作用があると考えられる。このほか、座位姿勢の不良な状態に対しては強制的に良肢位に保持できるので、全身にさらに大きな効果が期待できる。椅子からの立ち上がりではシーティングベルトを突っ張ることによりハムストリングの強力な収縮を引き出すことができた。ハムストリングは骨盤を介して大腿直筋などの二関節筋の作用で膝伸展に働くが、シーティングベルトはこの作用をさらに増強する。介護場面では介護者が骨盤を引き上げハムストリングの代わりの股関節伸展の役割を果たすことによりベルトを介して膝伸展力が生じる。動作解析の結果は、シーティングベルトがこれらのメカニズムで膝伸展に働くことを示した。